山 行 報 告
2012/3/10〜11   谷川・天神平(雪崩講習会)        メンバ:大高ゅ、新村  記録:新村 




【机上講習】 
2月21日(火)19:00〜 かながわ県民サポートセンター

 ・雪崩の危険トライアングル⇒雪崩地形/不安定な積雪/人と施設
 ・雪崩のよくある発生点…雪庇の下、岩壁の先端部、樹木の周囲、突出
  した岩
 ・雪崩道…発生区→走路→堆積区と広がっていく。       
 


【実技講習】

3月10日(土)7:00〜谷川岳天神平 クラスTとUに分かれて講習。

・クラスU…リーダー(講師)によるビーコンチェック、クロスサーチの練習、積雪面の断面観察、弱層テスト(ショベルコンプレッションテスト)、ビーコン捜索のシミュレーション、V字コンベアベルト・ビーコンチェック…受信チェックから送信チェックの順に行うと切り替え忘れがない。

 ・クロスサーチの練習…ビーコンでピンポイントを特定するための方法を練習する。

 ・積雪面の断面観察…日光の影響が少ない面で観察する。雪面に指を入れていくと、指がスッと入る層や堅い層、指が入らない層などがあることがわかる。ルーペでそれぞれの層の雪を観察する。

 ・弱層テスト…実際に歩く予定の危険箇所と類似しているが小規模でより安全な斜面で行う。縦30cm×横30cm×深さ1.2m程の四角柱を掘り、ショベルコンプレッションテストを行う。積雪状況により50〜70cm程の深さでも観察できる。

 ・ビーコン捜索のシミュレーション…リーダーを決めて雪崩発生時の複数捜索シミュレーションを行う。時間との勝負なので、リーダー指示の下、二次雪崩に注意しながら効率よく分担、捜索、救出することが重要。ビーコンをつけていない(つけているかわからない)遭難者の捜索も行う。目標は10分以内に全員救出。

 ビーコンにより一人が埋没者の位置を特定したら、別の一人がプロー
   ビング、その他はスコップで掘り出しにかかる。

 ビーコンで位置を特定した後のプロービングは、真ん中から渦巻き状
   に外へ広がっていくように捜索する。垂直に刺さないと意味がない。

 プローブで埋没者の位置を特定したら、目印のためプローブは抜かず
   にその場に刺したままにしておく。

 装備にもよるが、捜索範囲が広い場合はザックを背負ったまま捜索し
   た方がよい場合もある。

 残留物はまず拾い上げてみる。身体の一部がくっついているかもしれ
   ない。何もなければ、場所を動かさずその場に戻す。

 *遭難者の仲間(救助を求めている人)や周囲の人のビーコンを送信モ
   ードから受信モードに切り替えるよう指示を出す。パニックになり送信
   モードのままの場合がある。

 遭難者がビーコンをつけていない場合は、プローブ捜索になる。残留
   物の周囲、樹木の下、デブリの下などモノが堆積しやすい場所を想像
   して捜索する。または、横一列に並び等間隔で一斉にプローブ捜索を
   行う。

 ・V字コンベアベルト…埋没者の位置を特定したら真上ではなく横から
  引き出すように掘り進める。人数がいればピラミッド型で掘り進め、疲
  れる前に時計回りに交代していく。

 後ろの人は前の人が掘った雪を後ろへ運ぶだけでなく、前の雪を掘っ
   て遭難者を引きだすための道を作る。

 遭難者の顔が出たら気道確保し、全身が出るまでは無理に引きだそう
   としない。無理に引っ張ると骨折させる可能性がある。

雪崩講習会二日目 3月11日(日)8:30〜西黒尾根へ向かう林道にて実技講習。

 西斜面に湿雪の点発生表層雪崩の跡が数箇所あり、全層雪崩の箇所は林道までデブリが到達していた。雪崩の危険個所は30mほど間隔をあけながら通過した。しかし、途中で実際に北斜面から点発生雪崩が起こり、危険なので引き返す。

 樹林帯の西斜面をワカン、スノーシュー、つぼ足に分かれて上がり、積雪面の断面観察を行う。質疑応答をして講習は終了。

【質疑応答】
Q.特に雪崩発生の危険がある雪の層
 A.しもざらめの層。積雪内部の温度差が大きいときにできやすい。観察
   は難しい。

Q.実際に雪山へ行くときにどのような情報を確認して入るか。
 A.当日の天気予報だけでなく、一週間前からの天気予報をチェックし、
   積雪状況を予測する。日本雪崩ネットワークで発表している雪崩情報
   も参考になる。

Q.山スキーで登る斜面と滑る斜面が異なり弱層テストが難しいとき、
  また、滑る斜面に不安が残るときはどうするか。

 A.リーダー(上級者)が斜面を横に滑りスキーカットしてみる。スキーカッ
   トした部分から真下に雪崩が発生していくので、滑るスピードが早けれ
   ば雪崩に巻き込まれる心配は少ない。ただし、上級者でないと巻き込
   まれるので危険。

その後3月14日(水)に天神平で西斜面スキーカット中の雪崩事故が発生しており、現地のガイドが亡くなっている。上級者でも巻き込まれることがあるのでスキーカットはかなりの危険を伴うと感じた。雪崩ネットワークHPの雪崩事故調査速報を参考。

 講師の服巻さんは非常に詳しくて、どんな質問にも答えられた。雪は奥が深い。とりあえず、今年はビーコンとプローブをそろえようと思った。